刀磨きです。
今回のブログはネタじゃないんで、面白くないとおもいまする。
ま、俺の過去について自分で振りかえるために書いていると思ってくださいませ。
ちょっぴりシリーズかも。
小学校のころで覚えている人に、森川(仮)という奴がいる。
森川は変な人だった。
頭が良くて、学級委員長とかしてる。運動神経もよかった。
人気もあった。だが、遊ぶタイプと思いきや、本とかよく教室で読んでた。
そんな彼女と俺の出会いは唐突だった。
机に突っ伏していた俺。
そこにつかつかと彼女は歩いてきて。
いきなり、俺の手をすっと取って、
「刀磨きくんはビタミン足りてないね。」
いきなりそう言い放った。
「え?」
突然のことに戸惑う俺を見て、彼女は、
「ほら、ツメに縦線入ってるからさ。」
といった。
そして、すたすたまた去っていった。
……なんの脈絡もない。
違和感だらけ。
それが俺と、森川との出会いだった。
もちろん、俺の彼女に対する評価は、「変人」だった。
小学校で俺のポジションは奇妙なもので、大抵その時期は、みんな気のあう奴らとグループをつくるもんだが、俺はそんなことをあまりしなかった。(親友などはいたが)
いつもプラプラしていて、「今日はあっちと遊ぶかー」とか、「今日はこっちの奴らとメシ食おう」と、なんか不思議に渡り鳥していた。
通知表はいつも、「友人が多くて、優しい子で不思議な魅力を持った子です」。
そりゃ不思議だと自分でも思う。
球技が苦手で、サッカーとかバスケとかは下手。
ドッヂボールでは常に逃げまくる。
頭がいいかと言えば、そうでもない。
テストとかもあったんだが、いつも微妙炸裂だった。
ぜんぜん友人できるタイプじゃない。
そのくせに、奇妙なことは得意で、くだらんこと知ってたり、マットで倒立とかするのはうまかった。だから、みんながサッカーしてたりする中、適当にランダムな奴らとつるんで、くだらん遊び考えたりしてた。で、なんか考え付くと結構人が集まったりして。
バシルーラもそうだし。
んで大抵、学校で答辞(卒業生として代表として演説)とかを述べるのは学級委員長や、生徒会長なもんだが、どーも音読と作文がうまかったのが受けたのかなぜか俺が読んでいた。
こんな不思議な奴が書いて、読んだんだ。
もちろん、不思議な答辞になった。
……で、そんな不思議な変態である俺が、初めて認めた変な奴だった。
そんなある日。その森川に対する見方が変わる事件が起きた。
体育の前。そのころは更衣室というのがなくて、男子と女子は同じ教室で着替えた。
もちろん、その時は小学校五年生。
微妙に発達してるわけで、時間を分けて、である。
そんな時、俺は友人の「こっちこいよー」という言葉にしたがって、なにも知らずに女子の更衣中に突撃したことがある。
親友の豊田(仮)は俺をはめてみたかったらしく、俺が教室に入ったとたん、扉を閉めた。
もちろん、豊田(仮)爆笑である。
ぜんぜんあかない。
書いたが、小学校五年生。
もっとガキなら、円満にすむだろうが、たぶん、見つかったら耳年増な連中にボコられるなーと俺はうっすら感じていた。この時代、女子は強い。なにやっても先生に言って終わる。
だから、俺は死ぬほどあの一連の「せーんせーにいってやろー」の旋律が嫌いだった。
とりあえず、それは避けたい。
俺は、入り口からこっそり壁伝いにいって、奥のロッカーの影に隠れた。
場所はわかりにくいだろうが、とにかくあったのだ。そしてうまく誰にもばれてないようだった。
あー出られない。どうしようかなぁ。
俺はドキドキしつつ、女子が出るのを待った。
そんなとき、
森川さん(仮)と俺の目があった。
たまたまだった。
出口をしょんぼり見つめる俺と、
着替え途中体操服上に手を伸ばした半裸の森川(仮)。
みるみる不思議な空気が流れる。で、森川もうっすら赤くなってきていた。
あ……終わったな。
俺はたぶん叫ばれることを予測しつつ、目を瞑った。
だが。
そんなとき、彼女は「ふう。」とため息を一つついて。
「……こっちから出られるから。」
と言った。
「きゃーーー!?」とか抜かされて、完全エロ野郎としてあだ名確定と思っていた俺は突如のそのセリフの意味を理解するより先に、
「え、あ、うん。」
と、即うなずいていた。
すると、上半身裸の彼女は体操服の上をさっと着て、俺の手をとった。
んでもって、壁際を進みつつ、ツカツカと歩き。
俺を出口までつれていった。
見事、ばれずに(一名にはバレたが)、俺は外に脱出できたのだった。
「はい。」
外へ出た森川はすっと手を離した。で、変な笑顔をする。
そして、後ろ向いて、体育のグラウンドへ向かう。
俺は、なんといっていいのかわからないなりに、なにか言うべきとは感じたらしい。
「あ、ありがとう。」
ただこれだけ言った。
それに、森川は、
「ん。」
と手を上げて、体育へいってしまった。
このとき、、
なぜか、小学生である彼女が猛烈に大人に見えた。
なんか違うな、って思った。
その後、豊田(仮)らによって、俺は「女子更衣室へ突撃し、生還した唯一の勇者」としかなんとかでいろいろ祭られるわけだが……そんなことはどーも上の空で一日なんかぼーっとしてた。
ま。話はこれで終わりである。
小学校六年生になって、森川と俺は、クラスは変わり(森川はまた学級委員だったと思う)、話すこともなくなった。
猛烈に頭良かった彼女はどこの中学にいくんだろー……と少し気になったが、後で聞けば、俺の小学校からのエスカレーター式にある女子中学へとあがったらしい。
そして、数年後。
中学生になった俺は天王寺の駅で、その女子中学の広告の中の彼女と遭遇した。
相変わらずのバリバリ気の強そうな、かつ、頭よさそうな面をしていた。
以前の大人の印象はさらに濃くうつっていた。
「広告に載ってるってことは女子中学でも学級委員とかしてるんだろうな。」
と、小さく思ってみた。
今も不意に思う。
なんか不思議な奴だったなー、と。
しかし、今でも思い出すのは、なんでだろうか。
ま、確かにそのときの森川が魅力的だったからだろう。
で、思い出すたびに、俺は今も不意に爪を見るわけ。
……うっすら入る縦線。
「アセロラとかよく飲むのになぁ。」
……どうやら、まだ俺には、ビタミンが足りていないらしい。
サヨナラ、俺。サヨナラ、絶望。
明日は明日の風が吹く。
『君のために翼になる、君を守り続ける。柔らかく君を包む……あの風になる。』